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遠赤外線ヒーターなのに即昇温!QUTクイックウルトラサーモシリーズを徹底比較

2025.06.20
クイックウルトラサーモシリーズの集合写真

「セラミックヒーターを使っているけれど、昇温が遅い…。」とお困りではありませんか?

もし遠赤外線ヒーターの昇温スピードや加熱性能でお悩みであれば、TPRのQUTクイックウルトラサーモシリーズをご検討ください。

QUTヒーターは最速15秒でマックス温度600℃まで昇温する特殊な遠赤外線ヒーターです。本記事ではQUTヒーターの種類や特徴について、わかりやすく解説しています。

昇温スピードと加熱性能、どちらも譲れない現場へ

現代の製造業はグローバルな競争に勝ち抜くため、より早く、より安価に製品を市場に投入することが求められています。そのため、製造ラインでは生産タクトの短縮、開発現場では開発スピードのアップが必要です。

加熱・乾燥は工業製品で必須の工程ですが、他の工程より時間がかかるケースが多く、多くの企業が頭を悩ませています。以下の記事でも解説しているとおり、遠赤外線ヒーターを使用した放射加熱であれば、ネックとなっている加熱工程の時短が可能です

しかし、セラミックヒーターに代表される一般的な遠赤外線ヒーターは、立ち上がりの昇温スピードが遅いという欠点があり、頻繁に温度条件を変更する開発現場での使用には適しておりません。そこで活躍するのが、昇温スピードと加熱性能を両立したTPRのQUTクイックウルトラサーモシリーズです。

QUTクイックウルトラサーモシリーズとは?

QUTクイックウルトラサーモシリーズは、非常に素早い昇温と降温が特徴の遠赤外線ヒーターです

一般的なセラミックヒーターとは異なり、表面に特殊なセラミックを溶射した薄い帯状の金属を発熱体として、直接通電することで発熱します。これにより、瞬間的に設定温度に到達して、不要な時はすぐに降温できるのが特徴です。

遠赤外線はセラミックの温度が上がることで発せられます。セラミックが発熱体から剥離・脱落するとQUTヒーターの性能は低下しますが、TPRの溶射技術によってセラミックが剝離するリスクは極めて小さいことも特徴の1つです。TPRでは以下の動画のとおり、自社で溶射を行っています。

このようにQUTクイックウルトラサーモシリーズは、遠赤外線ヒーターながら即昇温が可能であり、なおかつセラミックの剥離レスによって性能低下が極めて起こりにくいのが特徴です。

QUTヒーター各機種の比較ポイント

QUT50QUT60QUT81
定格電圧(V)35V50V50V
消費電力(kW)0.600.690.59
電流(A)17.113.811.8
ケース寸法(mm)124×124
質量(g)360370250
ケース材質セラミックセラミックステンレス

TPR商事では上記の表のとおり、3種類のQUTヒーターを製造・販売しており、使用する設備や用途によって選定いただいております。

いずれの機種もKタイプの熱電対(センサー)の有無を選択でき、センサー付きタイプのQUTヒーターは温度調節器などの制御機器と組み合わせることで、高精度な温度コントロールが可能です

どの機種を選べばいい?

3種類のQUTヒーターにはそれぞれ特徴があり、お客様の用途に合わせて選定いただく必要がありますが、どの機種を選べばよいかお悩みになることもあるでしょう。以下にそれぞれの機種の特徴について詳細を記載しますので、選定の参考にしてください。

QUT50

QUT50の写真

QUT50はシリーズの中でも最も歴史があるロングセラー商品です。他のシリーズと比較して発熱体の幅が広く、遠赤外線の放射面積が広いため、同じ温度でもより多くのエネルギーをワークに与えられます。最高温度への昇温スピードは約30秒です。

デメリットになるのは1枚あたりに掛けられる電圧が35Vまでという点です。200Vで使用する際は降圧トランスを使用するか、6枚を直列でつなぐ必要があります。6枚を直列でつなぐと、1枚あたりに掛かる電圧は約33.3Vとなり、定格35Vをわずかながら下回ります。

QUT60

QUT60の写真

QUT60はQUT50のデメリットである定格電圧を50Vに改良したヒーターで、100V、200Vの電源でも接続しやすく、能力をフルに発揮できます。QUT50と比較して最高温度までの昇温スピードが約15秒とさらにスピーディーです

QUT50と60は外周ケースがセラミックで構成されています。外周ケースからも温まることで遠赤外線を放射するため、ワークに多くのエネルギーを与えられますが、外部からの衝撃に弱く、ヒーター1枚あたりの質量も重くなるのがデメリットです。

QUT81

QUT81の写真

QUT81は外周ケースがステンレスで構成されている軽量タイプのQUTヒーターです。QUT50と60とは異なる発熱体材料を使用しており、最高温度時の消費電力が0.59kWと省エネを実現しています。

必要に応じてヒーターが可動する設備に最適であり、真空成型機の予備加熱用ヒーターとして多数の採用実績があるヒーターです。

ユーザー事例・導入後の声

QUTヒーターはクイックレスポンスで昇温する性能が評価されて、様々な工程で導入されています。

  • ・真空成型前の予備加熱
  • ・車載用シートのしわ取り

2つの事例について、導入後の声を確認していきましょう。

真空成形前の予備加熱

お弁当のプラスチック容器や車のダッシュボードなどの内装部品は、真空成型と呼ばれる工程で製造されています。PPなどの樹脂を熱源で加熱して柔らかくした後、金型に投入して真空引きして密着させることで成形する工法です。

樹脂の予備加熱には以前から遠赤外線ヒーターが使用されていましたが、セラミックヒーターなど一般的な遠赤外線ヒーターは温度応答性が悪く、常時通電を行い、既定の温度に保っておく必要がありました。

QUTヒーターを採用することで、樹脂の予備加熱時にだけ通電する方法に変更が可能です。待機時間中の消費電力を大幅に削減して、品質は同等以上を確保できたと多くのお客様から喜ばれています

車載用シートのしわ取り

車載用シートの製造には、骨組みとなるフレームに本革や合皮を被せる工程があります。シートは保管や縫製時にどうしてもしわが寄ることが多く、フレームに被せた後に熱をかけて伸ばす作業が必要です。

スチームアイロンなどで直接シートを加熱する方法を取っていたお客様では、直接加熱による焼けや水分による電子部品への不具合が課題でした。QUTヒーターへ熱源を変更することにより、非接触での加熱が可能になっただけではなく、温度センサーとの組み合わせで常時正確且つ安全な加熱が可能になったと喜んでいただいております

導入に向けた技術サポート体制・Q&A

QUTヒーターはクイックレスポンスで即昇温・降温することが魅力の遠赤外線ヒーターですが、初めて導入するお客様は従来の熱源から置き換えができるかどうか不安に感じられると思います。以下に導入を検討されているお客様からのよくある質問をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

Q.100Vや200Vでの使用は可能ですか?

A.いずれのシリーズも1枚で接続する場合は、降圧トランスを使用する必要があります。使用される電圧に合わせて直列でつなぐ枚数を調整する使用方法が一般的です。

Q.金属を加熱したいのですが、使用できますか?

A.QUTから発せられる遠赤外線を金属は反射するため、金属自身の加熱には適しておりません。ただし、塗料などが塗られているなど表面処理の状態によっては効率的に加熱できる可能性もあります。

Q.従来のセラミックヒーターからそのまま置き換えできますか?

A.製品サイズ、定格電圧が問題なければ置き換えも可能です。セラミックヒーターが100Vや200V仕様の場合は、接続枚数を調整することでそのままご使用いただける可能性もあります。

Q.大型のセラミックヒーターを使っていますが、同じサイズでの製造は可能ですか?

A.QUTヒーターはいずれの種類も124×124のサイズのみです。現時点では、他のサイズをラインナップする予定はございません。

Q.制御機器や装置も合わせて提案してもらえますか?

A.制御機器や加熱装置もお客様のご希望に合わせて提案可能です。

TPR商事は、QUTヒーターの導入に向けての技術サポートが可能です。専門部署の機器営業部の技術スタッフが丁寧に説明します。

また実際に使用してみて、効果を確認したいというお客様にはデモ機の貸し出しや、TPR商事のサーマルテクノセンターでのテスト対応も可能です。従来の加熱工程を改善したいと考えていらっしゃるお客様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。