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なぜ「熱風」より「遠赤外線」なのか? 伝熱工学から見る樹脂・ゴム加熱の最適解

2026.01.29

「熱風と遠赤外線って、結局どっちのほうが速く加熱できるの?」と疑問を持たれている方もいらっしゃるでしょう。

樹脂やゴムの加熱においては、「対流」の熱風加熱よりも、「放射」の遠赤外線加熱の方が有効的です。

本記事では、伝熱工学の視点から、両者の加熱について解説しています。記事の最後には、遠赤外線加熱で時短につながった事例が確認できる資料もご案内していますので、参考にしてください。

加熱原理の比較:「対流」vs「放射」 

対流と放射の画像

加熱工程を考えるうえで、まず押さえておきたいのが「どのように熱が伝わっているか」という点です。加熱方式は大きく分けると、空気を媒体として熱を伝える「対流」と、電磁波としてエネルギーを直接伝える「放射」に分類されます。

この加熱方式の違いが、樹脂やゴムの加熱時間やエネルギー効率に大きな差を生むのです。それぞれの加熱方式を簡単に確認していきましょう。

熱風加熱が内部まで温まらない物理的理由

熱風加熱による「対流」は、加熱した空気を循環させて、その空気からワーク表面へ熱を移動させる方法です。この場合、熱は「空気→ワーク表面→内部」という順番で伝わるため、表面からの熱伝導に依存します。

樹脂やゴムは金属と比較して熱伝導率が低いのが特徴です。そのため、表面温度を上げても内部へ熱が届くまで時間がかかり、エネルギーロスが大きくなります。

分子振動で自己発熱させる遠赤外線(放射)のメカニズム 

一方、遠赤外線による放射加熱は、空気を介さずに、電磁波を直接ワークに照射する加熱方式です。遠赤外線が物質に当たると分子振動が起こり、ワークが自己発熱を起こします。遠赤外線は、ワーク表面で吸収され、内部まで届くわけではありませんが、ワーク表面の分子振動によって、内部まで熱が伝わりやすいのが特徴です。

このように対流と放射では、加熱のメカニズムが異なり、樹脂やゴムの加熱であれば、放射の方が、より素早く内部まで加熱できることがわかります。

樹脂・ゴムと遠赤外線の相性

遠赤外線は、電磁波を利用した加熱方式です。遠赤外線は空気をほとんど透過するため、空気自体は暖められません。また多くの金属は、表面で遠赤外線を反射してしまうため、加熱には不向きです。

一方、樹脂とは遠赤外線は抜群の相性を誇ります。詳しく確認していきましょう。

多くの樹脂・ゴム素材が高い吸収率を持つ遠赤外線領域

遠赤外線が樹脂やゴムの加熱に適している理由は、遠赤外線の波長帯と、樹脂やゴムの振動特性がよく一致している点にあります。

一般的に工業用途で使用される遠赤外線の波長は、およそ 2.5〜30μmの領域です。この範囲の電磁波は、多くの樹脂・ゴム材料に含まれる分子結合の振動エネルギーと重なりやすく、照射されたエネルギーが効率よく吸収されます。

例えば、ABS樹脂やポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)といった汎用・エンプラ系樹脂は、8〜12μm付近の遠赤外線に対して高い吸収率を示すのが特徴です。この結果、遠赤外線を照射すると、内部まで熱が浸透しやすい状態が生まれます。

内部まで熱が伝わりやすいことで実現する「均一な温度分布」

遠赤外線加熱は、しばしば「内部から加熱する」と表現されますが、厳密には遠赤外線そのものがワーク内部まで直接到達しているわけではありません。実際には、遠赤外線はワーク表面で吸収され、そのエネルギーが熱に変換された後、ワーク内部へは熱伝導によって伝わります。

重要なのは、遠赤外線が樹脂やゴムの表面で効率よく吸収されやすい点です。熱風加熱のように空気を介して表面を温める方式と比べ、放射エネルギーが表面でロスなく熱へ変換されるため、表面温度の立ち上がりが安定し、内部への熱伝導もスムーズに進みます。その結果、表面と内部の温度差が過度に広がりにくく、均一な温度分布が得られるのです。

この特性により、乾燥ムラや硬化ムラ、反りやクラックといった品質トラブルが起こりにくくなり、樹脂やゴムの安定した加熱が可能になります。

独自技術「QUT(クイックウルトラサーモ)」の優位性

QUTシリーズの画像

樹脂やゴムの加熱には遠赤外線加熱が有効であることがわかりました。遠赤外線ヒーターの代表例はセラミックヒーターですが、ヒーター自体の温度が安定するまでに10分以上かかることがデメリットです。

TPR商事では、このデメリットを解消しつつ、セラミックヒーターと同等以上の性能を誇る『QUTクイックウルトラサーモ』を提供しています。以下で特徴を確認していきましょう。

金属薄帯+特殊セラミック処理による高効率放射

QUTクイックウルトラサーモは、薄い帯状の発熱体に特殊なセラミック処理を施した遠赤外線ヒーターです。セラミック処理には、「溶射」と呼ばれる表面処理を活用しています。この溶射技術は、ピストンリングメーカーTPRの表面処理技術から派生したものです。

一般的なセラミックヒーターは、陶器にシーズヒーターが内蔵されています。シーズヒーターに通電することで熱が起こり、その熱が陶器に伝わって、遠赤外線が出る仕組みのため、温度が上がるまで時間がかかるのがデメリットです。

一方、QUTクイックウルトラサーモは、発熱体に遠赤外線を出すセラミックを直接溶射しています。通電と同時に発熱体の温度が上がり、セラミックも昇温するため、とてもスピーディーな昇温が可能です。

【データ公開】QUTクイックウルトラサーモの放射特性と昇温曲線グラフ

最速15秒で500℃以上に到達するQUTクイックウルトラサーモの昇温曲線グラフと、放射特性については、以下の資料で詳しいデータを公開しています。この機会にぜひダウンロードして内容をご確認ください。

    資料画像

    この資料で分かること

    • なぜ加熱時間を最大1/10に短縮できるのか?

    • インライン化・自動化を実現するためのライン構成案

    • 工程別の「課題解決」と「導入効果」の実例データ

    プライバシーポリシーをご確認のうえ、お問い合わせください。

    エンジニアが納得する制御仕様とラインナップ

    QUTクイックウルトラサーモは、多くの生産現場で使用されている遠赤外線ヒーターです。一般的なセラミックヒーターと同様の使い勝手で、「使いやすい」とエンジニアからも高い評価を得ています。

    温度管理の方法と製品ラインナップについて確認しておきましょう。

    PID制御による精密な温度管理が可能

    QUTクイックウルトラサーモは、一般的なセラミックヒーターと同様に、温度調節器とSSRなどの制御機器を利用して温度管理を行います。

    PID制御により、設定温度に対する立ち上がり時のオーバーシュートを抑えながら、安定した温度制御が可能です。加熱条件にシビアな樹脂やゴム、接着剤の硬化工程でも、温度バラつきを最小限に抑えられます。

    クイックレスポンスのヒーター特性と組み合わせることで、負荷変動に対しても素早く制御が追従し、ワークの流量や搬送速度が変化しても安定した加熱状態を維持する制御も可能です。

    軽量特化、センサー有無など幅広いラインナップ

    QUT50QUT60QUT81
    定格電圧(V)35V50V50V
    消費電力(kW)0.600.690.59
    電流(A)17.113.811.8
    ケース寸法(mm)124×124
    質量(g)360370250
    ケース材質セラミックセラミックステンレス

    上記はQUTクイックウルトラサーモのラインナップの一覧表です。それぞれのタイプで、温度センサー(Kタイプ熱電対)の有無が選択できます。

    例えば、頻繁に稼働する設備で使用したい場合は、軽量に特化したステンレスケースのQUT81が最適です。

    それぞれのラインナップについて、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

    技術仕様書・スペック表を入手する

    樹脂やゴムの製造現場では、対流式の熱風加熱炉が数多く使用されています。しかし、伝熱特性から考えると、樹脂やゴムと相性が良い遠赤外線による放射加熱を検討しない手はありません。

    以下の資料では、遠赤外線加熱によって時短を実現した事例を紹介しています。また本記事でも触れたTPR商事独自の遠赤外線ヒーター『QUTクイックウルトラサーモ』について、技術仕様書とスペック表を収録しています。無料でダウンロードできますので、ぜひこの機会にご覧ください。

      資料画像

      この資料で分かること

      • なぜ加熱時間を最大1/10に短縮できるのか?

      • インライン化・自動化を実現するためのライン構成案

      • 工程別の「課題解決」と「導入効果」の実例データ

      プライバシーポリシーをご確認のうえ、お問い合わせください。