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専門用語解説『表面実装技術SMT』

2021.04.01

1. 用語の意味と基本解説(初心者向け)

  • 用語名:表面実装技術(SMT)

定義

表面実装技術(SMT:Surface Mount Technology)とは、電子部品をプリント基板の表面に直接実装する技術のことです。
従来の「スルーホール実装」では、基板に穴をあけて部品のリード線を差し込み、裏側で半田付けを行っていましたが、SMTでは穴をあけず、基板表面に直接部品をはんだ付けします。

一般的な用途・事例

SMT(表面実装技術)は、今やほとんどの電子機器に使われている標準的な実装方法です。用途を大きく分けると以下のようになります。

1. 家電製品
・スマートフォン、タブレット、ノートPC
・テレビ、デジタルカメラ、ゲーム機

2. 自動車分野(車載電子機器)
・ECU(エンジン制御ユニット)
・カーナビ、インフォテインメントシステム
・安全装置(エアバッグ制御、ADAS、センサー基板)

3. 産業機器
・産業用ロボットの制御基板
・PLC(シーケンサ)、計測器
・医療機器の電子制御部

4. 通信・インフラ機器
・サーバー、ネットワーク機器(ルーター、スイッチ)
・5G基地局、通信モジュール

2. 技術的な詳細・現場での使われ方(専門向け)

  • 技術的な仕組み

SMTは「基板表面に電子部品を直接取り付けて、はんだで接続する仕組み」です。大きく4つのステップに分けられます。

1. はんだペーストの印刷
・基板のランド(銅パッド)上にクリーム状のはんだを塗布
・ステンシル(金属マスク)を使って、必要な部分にだけ印刷
・このはんだペーストが「接着剤」と「導電材」の両方の役割を果たす

2. 部品の搭載(マウンティング)
チップマウンタという専用ロボットが、リールやトレイに入った部品を高速で取り出し、基板に配置する
・部品はリードレスで小型なので、基板上に直接配置できる
・部品の位置ズレはカメラで補正してから搭載するため、高精度が確保される

3. リフローはんだ付け
・部品を載せた基板を「リフロー炉」に通す
・温度プロファイルに沿って加熱すると、はんだペーストが溶けて部品端子と基板ランドを接合

4. 検査・修正
・実装後に 外観検査装置(AOI)X線検査 で、はんだ不良や位置ズレをチェック
・必要に応じて手直しを行う

現場でのメリット / デメリット

メリット

小型・軽量化:部品がリードレスかつチップ形状なので、基板を薄く・軽く設計できる

高密度実装が可能: 微小な部品を実装でき、基板1枚に多くの回路を組み込める

自動化による生産性向上:マウンタとリフロー炉を用いたライン化で、1分間に数万個レベルの部品実装が可能

両面実装が容易:部品を表裏の両方に載せられるため、限られた基板面積を有効活用できる

信頼性の高い接合:リフローはんだ付けにより、均一な接合が得られやすい

部品調達性が高い: 現在の電子部品はほとんどがSMT対応部品で、設計自由度がある

デメリット

設備投資が高額:マウンタ、リフロー炉、検査装置など、一式で数千万円〜億単位の投資が必要

はんだ不良リスク: ボイドやブリッジ、はんだ量不足など微細不良が発生しやすい

修理・リワークが難しい: 小型部品は外観から不良が見えず、X線検査や熟練作業が必要

部品サイズが小さい: 作業者が手作業で扱うのが難しく、静電気対策や専用治具が必須

試作・少量生産に不向き:ライン立ち上げや設備設定の手間が大きく、コスト効率が悪い

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