定義
「SMD(Surface Mount Device)」とは、リフロー工程で使用される 表面実装部品 のことです。 従来のように基板に穴を開けてリード線を差し込む「スルーホール実装」ではなく、基板表面のランド(電極)に直接はんだ付けされる電子部品 を指します。 |
一般的な用途・事例
SMD(Surface Mount Device:表面実装部品)は、電子機器のほぼすべての分野で使われています。特に、小型化・高性能化・量産性が求められる製品で多く採用されています。
用途 | 具体例 | 採用理由 |
テレビ、エアコン、洗濯機 | 制御基板上のIC・抵抗・コンデンサ | コンパクトな制御基板を実現しやすい |
スマートフォン、タブレット | 通信IC、電源IC、チップ部品 | 高密度実装で薄型・軽量化を実現 |
パソコン、ゲーム機 | CPU、メモリ、チップ抵抗 | 高速信号伝達と放熱性に優れる |
ECU(電子制御ユニット) | SMD抵抗、SMDコンデンサ、マイコン | 振動・温度変化に強く、信頼性が高い |
センサー類 | 温度センサー、圧力センサー | 小型化により搭載自由度が高い |
カーナビ、車載ディスプレイ | IC、LED、電源回路部品 | 高機能電子制御に対応できる |
制御盤・PLC・計測器 | 各種制御IC、電源回路用SMD | 高信頼・省スペースの制御基板を構成できる |
産業用ロボット | モータドライバ、センサ回路 | 高速応答と耐環境性を両立できる |
SMD(Surface Mount Device:表面実装部品)の技術的な仕組みは、部品の構造と、それを基板に実装・接合するリフロー技術の両面で成り立っています。
1.SMDの構造 SMDは、従来のリード線付き部品(DIP)とは異なり、リードレスまたは短リード構造になっています。これにより、部品を基板表面のランドに直接はんだ付けできるよう設計されています。 2.実装プロセスの仕組み(リフロー方式) SMDの接合は、主にリフローはんだ付けによって行われます。 (1)クリームはんだ印刷 ・銀・錫などの微粉末とフラックスを混ぜたクリームはんだを、ステンシル版を使って基板のランド上に正確な量で印刷。 ・印刷精度が悪いと、ブリッジ(隣接短絡)や未接合の原因となる。 (2)部品実装(マウンティング) ・チップマウンターでSMDを高速・高精度に配置。 ・部品の底面電極が、クリームはんだ上に軽く接触する状態になる。 ・はんだの粘着性で仮固定されるため、仮止め工程は不要。 (3)リフロー加熱 ・基板をリフロー炉に通し、段階的に加熱する。 1.予熱(フラックス活性化) 2.溶融(はんだが溶けて電極とランドを濡らす) 3.冷却(はんだが凝固して接合完了) ・溶融時の表面張力によって、SMDは自動的にランドの中央へ自己整列する。 |
他の用語との違い
用語 | 日本語訳 | 意味・範囲 | SMDとの関係 |
SMT | 表面実装技術 | SMDを基板に取り付ける工程や装置 | 技術のこと |
SMA | 表面実装アセンブリ | SMDを実装した基板(製品) | 製品のこと |
DIP | デュアルインラインパッケージ | 穴挿し実装部品(デュアルインラインは2列に並んだリード端子を表す) | 実装方法の違い |
現場でのメリット / デメリット
メリット
部品の小型・軽量化が可能 リード線がなく基板表面に直接実装できるため、装置の薄型化・軽量化に有利です。 基板の高密度実装が可能 部品間隔を狭くできるので、狭い基板面積に多くの回路を組み込めます。 自動実装に適しており、生産効率が高い チップマウンターで高速かつ正確に配置でき、手作業が不要です。 基板の両面に実装できる スルーホールを必要としないため、表・裏両面を有効活用できます。 電気的特性が安定している リードが短い(または無い)構造のため、高周波特性に優れます。 耐振動性・耐衝撃性が高い 部品が低重心で固定されるため、車載・産業機器など振動の多い環境でも安定した接合が保たれます。 |
デメリット
手作業での修理や交換が難しい 部品が小さく密集しているため、手はんだでの交換は困難です。専用のリワーク設備が必要になります。 はんだ不良の検出が難しい 接合部が部品の下に隠れることが多く、外観検査だけでは判断しづらい場合があります。 加熱プロセスに弱い部品もある リフロー時の高温で、樹脂封止ICやLEDなどが熱ストレスを受けやすいため、温度管理が重要です。 実装工程に高精度が求められる クリームはんだの印刷ズレや部品位置ズレ、温度プロファイルの不適合などが歩留まりに直結します。 機械的強度が低い傾向がある リードが短いため応力吸収性が低く、基板の曲げや衝撃でクラックが発生することがあります。 |