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専門用語解説『ポッティング剤』

2021.04.01

1. 用語の意味と基本解説(初心者向け)

  • 用語名:ポッティング剤

定義

ポッティング剤とは、電子部品や回路を保護するために使われる封止材のことです。
液体状の樹脂などを部品の周囲に流し込み、硬化させることで、熱や湿気などの環境要因から保護して電気絶縁性を確保します。

一般的な用途・事例
ポッティング剤は、電子機器の信頼性と耐久性を高めるために、さまざまな分野で活用されています。以下で用途と事例を紹介します。

■主な用途
電子回路の保護: 湿気、ほこり、腐食、振動、熱などから回路基板を守るために使用されます。
電気絶縁: 高電圧部品の短絡防止や安全性向上に貢献します。
機械的強度の向上: 衝撃や振動に耐える構造を作り、部品の破損を防ぎます。
熱管理: 熱伝導性のあるポッティング剤を使うことで、発熱部品の冷却を助けます。
秘匿性の確保: 回路設計を隠す目的で、製品の内部構造を見えなくする用途にも使われます。
■具体的な事例
家電製品:湿気の多い環境で使われる洗濯機や冷蔵庫の制御基板の保護
自動車部品:エンジン周辺のセンサーや電子制御ユニットの耐熱・耐振動保護
産業機器:工場内の制御装置やセンサーを化学薬品や衝撃から守る

2. 技術的な詳細・現場での使われ方(専門向け)

  • 技術的な仕組み

ポッティング剤は電子部品を守るために使用される液体の保護カバーです。樹脂を流し込むだけではなく、材料の性質・注入方法・硬化条件など、複数の要素が関係しています。

■ポッティングの基本プロセス
準備と洗浄: 対象となる電子部品や基板を洗浄し、油分やほこりを除去します。
樹脂の選定と調合: 用途に応じてエポキシ、シリコン、ポリウレタンなどの樹脂を選び、必要に応じて硬化剤や添加剤を混合します。
注入(ディスペンシング): 精密なノズルやディスペンサーを使って、液状のポッティング剤を部品の隙間に流し込みます。
硬化(キュアリング): 温度や時間を制御して樹脂を硬化させます。
  • 他の用語との違い

ポッティング剤と混同しやすいのが防湿剤(コーティング剤)です。どちらも電子部品を保護するために使用されますが、目的や保護レベルが異なります。

項目ポッティング剤防湿剤(コーティング剤)
保護範囲部品全体を封止表面に薄膜を形成
保護性能高い(防水・耐衝撃・耐薬品)中程度(防湿・防塵・絶縁)
メンテナンス性低い(修理困難)高い(再加工可能)
重さ・厚み重くて厚い軽くて薄い
主な用途過酷な環境下の電子部品一般的な電子機器の基板保護
  • 現場でのメリット / デメリット
    • メリット
高い耐環境性: 湿気、粉塵、振動、熱、薬品など、過酷な環境でも電子部品をしっかり保護可能。
 電気絶縁性の向上: 高電圧部品の短絡防止や安全性確保に貢献できる。
機械的強度の付与: 衝撃や振動に強くなり、部品の破損リスクを低減できる。
長寿命化: 外部環境からの影響を減らすことで、製品の信頼性と寿命が向上する。
  • デメリット
修理・再加工が困難: 一度硬化すると部品の取り外しや修理がほぼ不可能。不具合時は丸ごと交換する必要がある。 
材料コストと作業時間: 樹脂の材料費が高く、硬化時間も必要。
重量・サイズの増加: 樹脂の充填により製品が重くなり、サイズも大きくなる。
気泡混入のリスク: 脱泡処理が不十分だと、気泡が入り絶縁不良や強度低下の原因になる。

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