定義
基板の「ランド(land)」とは、電子部品の端子やリードをはんだ付けするための銅箔パターン部分のことです。プリント基板上で、部品と電気的・機械的に接続する「着地点」の役割を果たします。 |
基本的な役割
ランドの基本的な役割は以下のとおりです。
1.部品の固定 チップ抵抗やICなどの端子をランドにはんだ付けして、部品をしっかり基板に固定します。 2.電気的な接続 ランドは配線パターン(トレース)とつながっており、電気信号を部品間で伝える導体の一部です。 3.放熱や強度の補助 大きめのランドは、はんだ量を確保して放熱性を高めたり、機械的な強度を持たせたりする目的でも設計されます。 |
「ランド」は見た目は単なる銅の丸や四角の点に見えますが、実は電気的接続・機械的強度・熱制御など、複数の技術要素が組み合わさって機能しています。
1. 構造的な仕組み ランドは、プリント基板(PCB)の銅箔層の一部として形成されています。 ・ランド部分は、エッチング(不要な銅を溶かす工程)によって銅箔の所定部分を残すことで作られている ・ランドの下には絶縁基材があり、他の導体と電気的に絶縁されている 2. 電気的な仕組み ランドは単なる「接点」ではなく、信号を伝える導体として設計されています。 ・銅箔の厚み(通常18〜70μm)によって、電流容量や抵抗値が変わる ・ランド径や形状は、接続する部品端子のサイズや信号特性(高周波ノイズ・寄生容量)に影響する。 ・スルーホールランドでは、穴壁に銅めっきを施して、ランドと内部配線を電気的に接続する ・ビアランドは、信号層間を通す「縦の配線」として動作する 3. 機械的・熱的な仕組み ランドは、部品を固定し、熱を逃がす役割も担っています。 ▶ はんだ付けとの関係 ランド上にフラックスとはんだが溶け、部品端子との間に濡れ広がることで、金属結合が形成される。はんだが冷えると、部品とランドが機械的に一体化して強度を持つ ▶ 放熱効果 大電流部品や発熱素子では、ランドを大きめに設計して熱を拡散・放出する熱を逃がすためにサーマルビア(熱伝導用の穴)を設けることもある |
ランドと混合しやすいのがパッド、ビア、スルーホール、パターンです。それぞれの用語の意味は以下の表を参照してください。
用語 | 意味・役割 | ランドとの違い |
パッド(pad) | 部品端子を実装するための導電面を指す。SMTでは「ランド」とほぼ同義。 | 実装分野では同義扱いが多いが、CAD設計では「ランド」はパッドを含む広い概念として扱う場合もある。 |
ビア(via) | 層間を電気的に接続するためのスルーホール。 | 信号や電流を垂直方向に伝えるための穴であり、部品の実装点ではない。 |
スルーホール(through hole) | 部品リードを挿入する穴。 | ランドはスルーホールの周囲の銅箔部分。穴そのものではない。 |
パターン(trace) | 基板上の銅配線。信号を横方向に伝える経路。 | パターンはランド同士をつなぐ線で、ランドは「接続点」。 |
現場でのメリット / デメリット
メリット
メリット | 内容 |
① 電気的接続の確実性 | 部品端子とはんだを介して導通するため、低抵抗で安定した電気接続が得られる。 |
② 機械的な固定性 | はんだ付けで部品を基板に強固に固定できる。振動や衝撃にも一定の耐性を持つ。 |
③ 実装精度の向上 | ランド形状が標準化されており、自動実装機(SMT装置)で高精度に部品を配置可能。 |
④ 熱伝導・放熱性 | 銅箔が熱を拡散するため、発熱部品の放熱に貢献。特に大面積ランドでは効果が大きい。 |
⑤ メンテナンス・検査が容易 | 検査用のテストパッドとしても利用でき、導通確認や修理がしやすい。 |
⑥ 多層基板への対応 | スルーホールランドやビアランドを通じて、内層や裏面への接続が容易。 |
デメリット
デメリット | 内容 |
① はんだブリッジのリスク | ランド間の間隔が狭いと、はんだが隣のランドに流れてショートするおそれがある。 |
② 熱ストレスによる剥離 | はんだ付け時やリワーク時の熱で、銅箔ランドが基板から剥がれることがある。 |
③ 機械的強度の限界 | 大きな部品や振動の多い環境では、ランドと基板の接合部にクラックが入ることがある。 |
④ 放熱によるはんだ不良 | 大面積ランドは熱を奪いやすく、リフロー時にはんだが十分に溶けず接合不良を起こす場合がある。 |
⑤ 酸化・腐食の影響 | 銅箔は酸化しやすく、表面処理(Ni/Au、OSPなど)を適切に行わないと濡れ性が低下。 |
⑥ 設計制約が多い | 部品サイズやピッチに合わせて形状を設計する必要があり、CAD設計の自由度が制限される。 |