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専門用語解説『ランド』

2021.04.01

1. 用語の意味と基本解説(初心者向け)

  • 用語名:ランド

定義

基板の「ランド(land)」とは、電子部品の端子やリードをはんだ付けするための銅箔パターン部分のことです。プリント基板上で、部品と電気的・機械的に接続する「着地点」の役割を果たします。

基本的な役割

ランドの基本的な役割は以下のとおりです。

1.部品の固定
チップ抵抗やICなどの端子をランドにはんだ付けして、部品をしっかり基板に固定します。

2.電気的な接続
ランドは配線パターン(トレース)とつながっており、電気信号を部品間で伝える導体の一部です。

3.放熱や強度の補助
大きめのランドは、はんだ量を確保して放熱性を高めたり、機械的な強度を持たせたりする目的でも設計されます。

2. 技術的な詳細・現場での使われ方(専門向け)

  • 技術的な仕組み

「ランド」は見た目は単なる銅の丸や四角の点に見えますが、実は電気的接続・機械的強度・熱制御など、複数の技術要素が組み合わさって機能しています。

1. 構造的な仕組み
ランドは、プリント基板(PCB)の銅箔層の一部として形成されています。
・ランド部分は、エッチング(不要な銅を溶かす工程)によって銅箔の所定部分を残すことで作られている
・ランドの下には絶縁基材があり、他の導体と電気的に絶縁されている

2. 電気的な仕組み
ランドは単なる「接点」ではなく、信号を伝える導体として設計されています。
銅箔の厚み(通常18〜70μm)によって、電流容量や抵抗値が変わる
ランド径や形状は、接続する部品端子のサイズや信号特性(高周波ノイズ・寄生容量)に影響する。
スルーホールランドでは、穴壁に銅めっきを施して、ランドと内部配線を電気的に接続する
ビアランドは、信号層間を通す「縦の配線」として動作する

3. 機械的・熱的な仕組み
ランドは、部品を固定し、熱を逃がす役割も担っています。

▶ はんだ付けとの関係
ランド上にフラックスとはんだが溶け、部品端子との間に濡れ広がることで、金属結合が形成される。はんだが冷えると、部品とランドが機械的に一体化して強度を持つ

▶ 放熱効果
大電流部品や発熱素子では、ランドを大きめに設計して熱を拡散・放出する熱を逃がすためにサーマルビア(熱伝導用の穴)を設けることもある
  • 他の用語との違い

ランドと混合しやすいのがパッド、ビア、スルーホール、パターンです。それぞれの用語の意味は以下の表を参照してください。

用語意味・役割ランドとの違い
パッド(pad)部品端子を実装するための導電面を指す。SMTでは「ランド」とほぼ同義。実装分野では同義扱いが多いが、CAD設計では「ランド」はパッドを含む広い概念として扱う場合もある。
ビア(via)層間を電気的に接続するためのスルーホール。信号や電流を垂直方向に伝えるための穴であり、部品の実装点ではない。
スルーホール(through hole)部品リードを挿入する穴。ランドはスルーホールの周囲の銅箔部分。穴そのものではない。
パターン(trace)基板上の銅配線。信号を横方向に伝える経路。パターンはランド同士をつなぐ線で、ランドは「接続点」。

現場でのメリット / デメリット

メリット

メリット内容
① 電気的接続の確実性部品端子とはんだを介して導通するため、低抵抗で安定した電気接続が得られる。
② 機械的な固定性はんだ付けで部品を基板に強固に固定できる。振動や衝撃にも一定の耐性を持つ。
③ 実装精度の向上ランド形状が標準化されており、自動実装機(SMT装置)で高精度に部品を配置可能。
④ 熱伝導・放熱性銅箔が熱を拡散するため、発熱部品の放熱に貢献。特に大面積ランドでは効果が大きい。
⑤ メンテナンス・検査が容易検査用のテストパッドとしても利用でき、導通確認や修理がしやすい。
⑥ 多層基板への対応スルーホールランドやビアランドを通じて、内層や裏面への接続が容易。

デメリット

デメリット内容
① はんだブリッジのリスクランド間の間隔が狭いと、はんだが隣のランドに流れてショートするおそれがある。
② 熱ストレスによる剥離はんだ付け時やリワーク時の熱で、銅箔ランドが基板から剥がれることがある。
③ 機械的強度の限界大きな部品や振動の多い環境では、ランドと基板の接合部にクラックが入ることがある。
④ 放熱によるはんだ不良大面積ランドは熱を奪いやすく、リフロー時にはんだが十分に溶けず接合不良を起こす場合がある。
⑤ 酸化・腐食の影響銅箔は酸化しやすく、表面処理(Ni/Au、OSPなど)を適切に行わないと濡れ性が低下。
⑥ 設計制約が多い部品サイズやピッチに合わせて形状を設計する必要があり、CAD設計の自由度が制限される。

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