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専門用語解説『エンジニアリングプラスチック』

2021.04.01

1. 用語の意味と基本解説(初心者向け)

  • 用語名:エンジニアリングプラスチック

定義

エンジニアリングプラスチックとは、強度や耐熱性が高く、金属の代わりに機械部品や電気部品などに使える高性能なプラスチックのことです。「エンプラ」と呼ばれることもあります。

エンジニアリングプラスチックの用途・事例

1.自動車部品
エンジン回りの部品などで使用されている。金属より軽く、燃費改善や部品寿命の延長化に貢献。

2.電気・電子機器
スマートフォン、コネクタやスイッチ部品に使用されている。絶縁性・耐熱性を活かして、安全性と小型化を実現。

3.機械・産業機器
歯車やベアリング、摺動部品に使用されている。耐摩耗性や潤滑性を活かして金属の摩耗や重さを回避。

4. 医療機器
手術器具の一部、減菌可能な容器などに使用されている。金属より軽く、耐薬品性を活用。

5.日用品・その他
ヘルメット、光学レンズなどで使用されている。軽くて丈夫であり、透明性や加工性を活用。

2. 技術的な詳細・現場での使われ方(専門向け)

  • 技術的な仕組み

エンジニアリングプラスチックは「分子構造の工夫(剛直性・結晶性・分子間力)」+「ガラス繊維や添加剤による補強」によって、金属やセラミックスの代替になれる性能を発揮しています。

嚙み砕いて言い換えると、「中身の骨組みがしっかりしていて、必要なら添加剤などで補強もできる」イメージで、強度があり、熱にも強いプラスチックです。

  • 汎用プラスチックとの違い

汎用プラスチックは、安価で加工しやすく、日用品から自動車部品まで幅広く活用されていますが、強度や耐熱性が高くなく、工業用材料には適していません。

一方、エンジニアリングプラスチックは、金属やセラミックの代替になるほど強く、耐熱性にも優れています。

  • エンジニアリングプラスチックと汎用プラスチックの一例
エンジニアリングプラスチック汎用プラスチック
ポリアセタール(POM)ポリエチレン(PE)
ポリカーボネート(PC)ポリプロピレン(PP)
ポリアミド(PA、ナイロン)ポリスチレン(PS)
ポリエチレンテレフタレート(PET・エンプラグレード)塩化ビニル(PVC)
ポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリエチレンテレフタレート(PET)

※PETは、汎用プラスチックとエンジニアリングプラスチックの両方に登場します。ペットボトルなどに使用される汎用品を耐熱改善したのがエンプラグレードです。

  • 現場でのメリット / デメリット
    • メリット
1.軽い:装置や部品の軽量化に貢献

2.耐食性、耐薬品性:腐食の心配がないため、メンテナンス負担が減る

3.加工性が良好:射出成形で複雑形状でも対応しやすい

4.摺動性や耐摩耗性:潤滑油なしでも動きがスムーズ

5.電気的特性が良い:絶縁性に優れて、電気・電子部品でも安心
  • デメリット
1.コストが高い:汎用プラスチックや金属より単価が高い

2.寸法変化がある:吸水で膨らむものもあり、精密部品では注意が必要

3.金属の強度には勝てない:金属ほどの剛性や耐衝撃性はない

4.耐候性に限界がある:紫外線で劣化する材料もある

5.リサイクルが難しい:ガラス繊維や添加剤が入り、再利用しづらい

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