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卓上加熱炉の基本と遠赤外線加熱技術|小型・高性能ヒーターの原理と活用例

2025.07.01
卓上加熱炉の基本と遠赤外線技術に関する記事のサムネイル画像

「コンパクトな加熱炉を探しているけど、なかなか良いものがない…。」とお困りではありませんか?

TPR商事の卓上加熱炉STHシリーズは、数多くのユーザー様にご使用いただいている汎用性の高い加熱設備です。小型で高性能な即熱式遠赤外線ヒーターが搭載されています。

本記事では卓上加熱炉について、技術用語を含めてわかりやすく解説しています。小型の加熱炉を導入したいとお考えの方は必見です。

卓上加熱炉とは?|コンパクト設計に秘められた高性能

卓上加熱炉のイメージ図

卓上加熱炉とは、その名のとおり机に上に乗るほどコンパクトな加熱装置です。TPR商事が提供する卓上加熱炉STHシリーズは電気式の遠赤外線加熱方式を採用しています。電源をつなぐだけですぐに使用でき、エアーや蒸気など他のユーティリティを必要としません。

全長1,000mm×幅525mmと非常にコンパクトでありながら、搬送はSUSのメッシュコンベア方式を採用しており、作業効率が良く、再現性の高い加熱処理が可能です

卓上加熱炉STHシリーズの詳細については、以下の商品ページをご確認ください。

加熱方式の違い|放射(遠赤外線)・対流・伝導の比較

放射・対流・伝導のイメージ図
画像:「放射・対流・伝導」のイメージ図
加熱原理主な熱源メリットデメリット
放射遠赤外線ヒーターワークを非接触で効率的に加熱複雑形状のワークは温度ムラができやすい
対流熱風複雑な形状でも均一な加熱が可能昇温に時間がかかる
伝導ホットプレート直接加熱で素早い昇温熱源が触れていない箇所は加熱できない

上のイラストは代表的な加熱方式である放射・対流・伝導のイメージを表したものであり、それぞれのメリットとデメリットを表でまとめました。

卓上加熱炉STHシリーズは遠赤外線ヒーターによる放射でワークを加熱する設備であり、ワークを非接触で効率よく加熱できます

熱風式の加熱炉の場合、熱風を送り込むダクトやファンなど他の付帯設備が必要となるため、装置サイズが大きくなりがちです。また熱風式の場合、加熱炉から周囲に熱が漏れるリスクがありますが、放射加熱の卓上加熱炉STHシリーズの場合は、熱漏れを最小限に抑えられます。

放射・対流・伝導を詳しく知りたい方は、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひお読みください。

卓上加熱炉に搭載されている即熱式遠赤外線ヒーターの特長

QUT60の写真

卓上加熱炉STHシリーズには、即熱式遠赤外線ヒーター『QUT60』が8枚搭載されています。QUT60の主な仕様は以下のとおりです。

商品名QUT60
定格電圧(V)50V
消費電力(kW)0.69
電流(A)13.8
ケース寸法(mm)124×124
質量(g)370
ケース材質セラミック

QUT60は最速15秒でヒーター温度が500℃にもなるクイックレスポンスが特徴の遠赤外線ヒーターです。卓上加熱炉の運転ボタンを押せば、すぐにQUT60が起動して、最短時間でワークを投入できるようになります。

卓上加熱炉は温度調整区分が3ゾーンあり、ご希望の温度プロファイルの設計が可能です。例えば、入口部に設置したQUTヒーターの温度を高くしておけば、ワークの急速昇温を実現できます。

QUT60を含むQUTクイックウルトラサーモシリーズについては以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてお読みください。

卓上加熱炉が活用される主な用途と業界

卓上加熱炉STHシリーズは多くのお客様にご採用いただいております。ここからは実際にご活用いただいている用途や業界について解説します。

  • ・ポッティング、コーティング乾燥、アニールなどの樹脂加熱
  • ・電子部品の熱負荷試験
  • ・研究・試作などの少量生産

上記3つについて確認していきましょう。

ポッティング、コーティング乾燥、アニールなどの樹脂加熱

卓上加熱炉STHシリーズの熱源であるQUTヒーターから発せられる遠赤外線は、樹脂と非常に相性が良く、効率的な加熱が可能です。数多くある樹脂処理のなかでも、以下の工程で卓上加熱炉はよく採用されています。

工程名内容
ポッティング電子部品保護のための樹脂封止
コーティング乾燥塗装や防湿材、フッ素樹脂などを塗布したあとの乾燥
アニール樹脂製品内部の応力を加熱・冷却によって取り除く工程

遠赤外線による加熱は、電磁波によってワークの分子を振動させることで、効率的にワークを昇温させます。そのため、熱風加熱よりもワークの昇温が速くなり、加熱工程の時短につながるのがメリットです。

ポッティング、コーティング乾燥、アニールといった樹脂加熱とは非常に相性が良く、卓上加熱炉で試験・検証を行い、その後の量産ラインでも遠赤外線加熱を採用するユーザー様が多くいます。

電子部品の熱負荷試験

卓上加熱炉は、電子具品が高温環境にさらされた場合の耐性や信頼性を評価するための熱負荷試験で活用されています。

例えば、ワーク温度を120~170℃で変化させて、抵抗値の測定や不具合の有無を確認するための試験があるとします。熱風式やホットプレート式の場合、設定温度を変更させても温度が安定するまで時間がかかるため、熱負荷試験の効率が上がりません。

卓上加熱炉はクイックレスポンスが売りのQUTヒーターを採用しているため、温度変更に即座に対応でき、試験時間の短縮が可能です

研究・試作などの少量生産

卓上加熱炉は全長1,000mm×幅520mmとサイズがコンパクトに設計されています。量産設備として導入されるケースはどちらかというと少なく、研究現場や試作ラインなどの少量生産に最適な設備です

機能や装備は厳選して最小限にしており、その分低価格を実現しています。予算が限られている研究・試作ラインでも導入しやすく、ユーザー様の状況に合わせてのカスタマイズにも対応可能です。

少量生産で条件出しを行った後、卓上加熱炉をベースに量産機の検討もできるため、設備構想の初期段階として適しています。

卓上加熱炉の導入メリット|なぜ選ばれているのか

卓上加熱炉は多くのユーザー様に導入いただいております。特に以下の点をメリットだと考えるユーザー様が多いのが印象的です。

  • ・小型でも人手不要の自動加熱が可能
  • ・温度条件変更が容易・再現性が高い
  • ・熱風式と比べて省電力

それぞれのメリットを掘り下げて確認していきましょう。

小型でも人手不要の自動加熱が可能

小型の加熱炉といえば、金庫のような形をしたバッチ式を想像する人が多いと思います。バッチ式の場合、ワークの投入と排出を基本的に人が行う必要があり、生産効率が上がりません。

自動での加熱処理を行うためにはコンベア式が効率的ですが、「小型」と呼ばれるものでも全長が3,000mmを超えるものも多く、スペースが限られている場合、設置が難しいこともあります。

卓上加熱炉STHシリーズは、全長1,000mm×幅520mmと作業台の上に乗るほどコンパクトな炉体でありながら、コンベア式で自動加熱が可能であり、加熱処理の際に人手が必要ありません。卓上加熱炉STHシリーズは、他に類を見ない小型でも人手不要のコンベア式加熱炉です。

温度条件変更が容易・再現性が高い

卓上加熱炉STHシリーズは、デジタル式の温度調節器とスピードコントローラーで制御を行う仕様であり、直感的な操作で誰でも条件変更が可能です。仮に電源をOFFにしても、ヒーター温度とスピードコントローラーの設定値は前回のものが記憶されています。

運転ボタンと停止ボタンのみでの操作であり、操作説明不要で誰でも簡単に使用可能です。設定さえ決まれば、いつでも誰でも同じ条件で運転ができるため、再現性が高い加熱処理ができます

卓上加熱炉STHシリーズの使用方法については、以下の動画もぜひ参考にしてください。

熱風式と比べて省電力

卓上加熱炉に採用されているQUTヒーターは電源投入後にすぐに設定の温度まで昇温します。設定温度まで昇温するまでも消費電力は大きいですが、すぐに温度調節器による制御が始まるため、実際の消費電力は定格の約30%です

一方、一般的な熱風式の加熱炉は温度が安定してからの消費電力が定格の約60~70%のため、卓上加熱炉の方が省電力で運転できます。

まとめ|卓上加熱炉×遠赤外線加熱で加熱工程を最適化に

TPR商事が提供する卓上加熱炉STHシリーズは、自社のQUTヒーターを熱源として採用しており、樹脂加熱や開発・試作ラインでの加熱装置として最適です。クイックレスポンスのQUTヒーターで、作業性を向上させつつ省電力を実現します。

卓上加熱炉STHシリーズについて詳しく知りたい方は、TPR商事までお気軽にお問い合わせください。専門部署が導入に向けてのサポートを万全に行います。