「リフロー炉を導入しようと思っているけれど、どう選定すればよいかわからない...。」とお困りではありませんか?
リフロー炉は、表面実装技術(SMT)に欠かせない設備です。主に遠赤外線方式と熱風方式があり、導入前には慎重に検討する必要があります。
本記事では、リフロー炉の種類と選定ポイントについてわかりやすく解説しています。リフロー炉の導入を検討されている方は必見です。
リフロー炉は、電子部品をプリント基板に実装する際に、はんだペーストを溶融・硬化させるための装置です。
実装品質は、製品の信頼性や性能に直結するため、リフロー炉による温度管理は極めて重要となります。適切な温度プロファイルを設定し、基板全体に均一な熱を与えることが特に重要です。
リフロー炉には、主に以下2つの加熱方式があります。
それぞれの方式には特徴があり、基板の種類、部品の特性、生産量などに応じて最適な方式を選択することが大切です。2つの方式について掘り下げて確認していきましょう。
熱風方式のリフロー炉は、熱風を炉内に循環させることで、基板全体を均一に加熱します。
熱風方式の最大のメリットは、温度分布の均一性が高いことです。複雑な形状の部品や、熱容量の異なる部品が混在する基板でも、安定したはんだ付けができます。炉内の温度制御が比較的簡単であり、幅広い種類の基板に対応可能です。
デメリットとしては、熱容量の大きい基板や部品の場合、加熱に時間がかかる傾向があること、炉内の熱風循環により、微小な部品が移動するリスクがわずかながらあることが挙げられます。
遠赤外線方式のリフロー炉は、遠赤外線ヒーターから放射される熱エネルギーを利用して基板を加熱します。
遠赤外線方式のメリットは、熱効率が高く、急速な加熱が可能な点です。熱容量の小さい基板や、生産性を重視する場合には有効であり、熱風による部品の移動リスクがないため、微細な部品の実装にも適しています。
一方で、部品の影になる部分が加熱しにくく、温度分布の均一性が熱風方式に比べて劣るのがデメリットです。そのため、基板設計や部品配置に工夫が必要となります。
方式 | メリット | デメリット |
熱風方式 | ・温度分布の均一性が高い ・幅広い基板に対応可能 | ・加熱に時間がかかる場合がある ・微小部品の移動リスクがわずかにある |
遠赤外線方式 | ・熱効率が高く、急速加熱が可能 ・微細部品の実装に適している | ・影になる箇所は加熱しにくい ・温度分布の均一性が劣る |
上の表は、熱風方式と遠赤外線方式のリフロー炉について、メリットとデメリットを簡単に比較したものです。ここからは、両方式の以下2点についても確認していきます。
熱風方式は、炉内全体に熱風を循環させるため、基板全体の温度分布が均一になりやすいという特徴があります。
一方の遠赤外線方式は、直接的な放射熱を利用するため、部品の影になる部分では温度が上がりにくく、均一加熱性に課題が生じることがあります。これは、特に部品実装密度が高い基板や、背の高い部品が配置されている基板で顕著になります。
均一加熱性では熱風方式が有利ですが、急速加熱によるリフロー工程の時短を狙いたい場合は、遠赤外線方式が有効的です。
一般的に、遠赤外線方式は熱効率が高いため、熱風方式に比べて消費電力を抑えられる傾向があります。しかし、これは炉の構造や使用条件によって異なるため、一概には比較できないのが実態です。
省エネルギーを重視する場合は、各メーカーの製品仕様を詳細に比較検討する必要があります。
リフロー炉を選定する際には、自社の生産体制や製品特性に合わせて、まず以下の2点を確認しましょう。
それぞれを少し掘り下げて確認していきます。
まず生産する基板の最大サイズと部品の実装密度を確認します。これらはリフロー炉の加熱特性や温度プロファイルの安定性に直結する要素です。
大型基板では面積全体に均一な温度を与える必要があり、熱風方式のように炉内の温度ムラが少ないタイプが適しています。特に基板端部と中央部の温度差が大きいと、はんだ付け不良や部品の浮きなどを招くため、安定した加熱ができる設備が望ましいでしょう。
一方、小型基板や部品点数が少ない基板では、加熱領域が限定されるため、遠赤外線方式でも十分なリフロー品質を得られる場合があります。遠赤外線方式は、電力効率が良く立ち上がりも早いため、小ロットや試作生産などに有効的です。
部品実装密度が高い基板では、隣接部品への熱干渉や影による加熱不足も考慮が必要です。その場合も、風量や温度制御が細かく設定できる熱風方式が有利となります。
次に検討すべきは、生産量に対してどの程度の設備コストをかけられるかという点です。
リフロー炉は方式によって初期導入費やランニングコストが大きく異なるため、生産規模とのバランスを取ることが選定の鍵になります。
大量生産を行う場合は、熱風方式が一般的です。温度の安定性が高く、連続生産に適しているため、長時間稼働させても品質のバラつきが少ないのが特徴です。導入コストは高めですが、歩留まり向上や作業効率化によってトータルコストを抑えられるケースも多いでしょう。
一方、少量多品種や試作段階での生産が中心の場合は、遠赤外線方式が有効です。構造がシンプルで導入費用が抑えられるうえ、立ち上がりが早く、電力消費も比較的少ないため、稼働時間が短いラインでも無駄が出にくいのが利点です。
将来的な量産化を見据える場合は、最初に遠赤外線方式を導入し、生産が軌道に乗った段階で熱風方式へ切り替えるケースもあります。このように、生産量・製品サイクル・投資計画をセットで考えることで、より現実的な設備選定が可能です。
TPR商事では、小型で遠赤外線方式の卓上リフロー炉を提供しております。卓上リフロー炉は、限られたスペースでの使用を想定しており、試作開発や少量生産での利用に最適です。コンパクトな設計でありながら、上下10区分での細かい温度制御が可能であり、様々な温度プロファイルに対応できます。
実験機による温度プロファイル測定などのテスト依頼についてもお受けしておりますので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。