
「リフロー炉には大気仕様と窒素仕様の2つがあるけれど、どちらを選べばよい?」とお悩みではありませんか?
リフローでは、雰囲気の違いが品質の違いに影響する場合があります。
本記事では、窒素雰囲気でのリフローについて、概要をわかりやすく解説しました。リフロー炉の雰囲気選択にお困りの方は必見です。

リフローとは、プリント基板に印刷したはんだペーストを加熱して溶かし、電子部品を接合する工程です。リフロー炉では、温度を段階的に上げることで、はんだが溶融してパッド(金属電極)に濡れ広がり、接合が形成されます。
一般的なリフロー炉は「予熱 ⇒ソーク⇒リフロー(ピーク)⇒冷却」という4つのゾーンに分かれています。リフローゾーンで高温になると、はんだや金属パッドが酸素と反応して酸化膜を形成します。この酸化膜が、リフロー品質を左右する大きな要因となります。
リフローの基本的な知識については、以下の記事で解説していますので、合わせてご確認ください。

リフローで窒素が必要となるのは、主に以下の理由があるためです。
それぞれを掘り下げて確認していきましょう。
はんだ(Sn、Agなど)は高温時に酸化しやすく、表面に酸化スズ(SnO、SnO₂)などの膜を作ります。この酸化膜ができると、はんだが金属パッドにうまく濡れず、「濡れ不良」や「ボール残り」の原因になります。
リフロー炉内を窒素雰囲気にすると、加熱中の酸化反応が起こりにくくなります。結果として、はんだ表面がきれいな状態を保ち、濡れ性(広がりやすさ)が向上します。 特に微細実装や高密度実装では、酸化防止効果が品質安定に直結します。
はんだペーストに含まれるフラックスは、酸化膜を除去し、金属表面をきれいにする役割を持っています。しかし、酸素が多い大気中ではフラックスが酸化反応に多く消費され、十分な効果を発揮できません。
窒素雰囲気下では、酸化反応が抑えられるためフラックスの活性が長持ちします。はんだの広がりが安定し、濡れムラやボイド不良の発生を抑制できるため、歩留まりの向上や不良削減につながります。
リフローにおけるフラックスの役割については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご確認ください。
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酸化が進むと、はんだがパッド間にうまく分離せず、ブリッジ(短絡)やボール残りなどの不良が発生しやすくなります。
窒素リフローでは酸化が抑制されるため、はんだの表面張力が安定し、きれいに濡れて分離する挙動になるのが特徴です。
| 項目 | 大気リフロー | 窒素リフロー |
| 雰囲気 | 酸素約21% | 酸素数百ppm |
| 酸化 | 発生しやすい | ほぼ抑制できる |
| 濡れ性 | 低い | 高い |
| 外観 | くすみやすい | 光沢のある仕上がり |
| 不良発生 | ブリッジ、ボール | 少ない |
| コスト | 安い | 高い(N₂供給) |
上記は大気リフローと窒素リフローを簡単に比較した表です。大気リフローはコストが安価ですが、酸化が進みやすく、外観がくすんだり、表面に酸化膜が残ることがあります。
一方で窒素リフローは酸化を防ぎ、はんだ表面が光沢のある美しい仕上がりになります。品質の安定化と外観品質の向上を両立できるのがメリットですが、N2の供給などでコストが高くなるのがデメリットです。
窒素リフローを導入する際のメリットと注意点は以下のとおりです。
| メリット | 注意点 |
| ・酸化防止による品質向上 ・フラックス活性の安定化 ・不良低減による歩留まりの改善・外観品質の向上 | ・コストの増加 ・酸素濃度の管理 ・運用時の条件設定 |
窒素リフローを導入する最大のメリットは、酸素濃度を低く管理して、品質を向上できる点です。品質要求が厳しく、高密度実装や高信頼性が求められる製品であれば、窒素リフローはマストとなります。
一方で、常に酸素濃度を管理するために、N2ガスを供給する必要があり、ランニングコストが高額になるのがネックです。運用時の条件出しをあらかじめ行い、日々の運用で条件が維持できているか監視が必須ですが、万が一条件を満たしていない場合は、リフロー品質に直結してしまいます。

リフロー炉で窒素を使用する最大の目的は、酸化を防いで品質を安定させることです。酸化防止により、はんだの濡れ性が向上し、ブリッジやボール不良が減少します。さらに、フラックスの活性維持や外観品質の向上など、多くの効果を得ることが可能です。
TPR商事では、大気リフロー炉の他に窒素リフロー炉も特注で対応できます。テストができるデモ機も用意しておりますので、窒素リフロー炉が気になる方はお気軽にお問い合わせください。