
「リフローにおけるフラックスの役割を知りたい!」とお考えではありませんか?
電子部品の製造工程であるリフローでは、フラックスという成分が重要な役割を担っています。
本記事では、リフローにおけるフラックスの役割について、わかりやすく解説しました。

フラックスは、はんだペーストの中に含まれる補助成分で、金属表面の酸化膜を除去して、はんだの濡れを助ける役割を持っています。主な構成成分は次の3つです。
| 成分 | 役割 |
| 活性剤 | 金属表面の酸化膜を分解する化学反応剤 |
| 樹脂(ロジンなど) | 金属表面を保護し、再酸化を防止する |
| 溶剤 | 各成分を均一に混ぜ、印刷適性を保つ |
フラックスは、はんだの潤滑剤であり洗浄剤です。加熱により溶剤が揮発し、活性剤が酸化膜を除去することで、金属と金属が直接接触できる状態を作り出します。
はんだが金属パッドにしっかり濡れない最大の原因は、酸化膜です。はんだの主成分であるスズ(Sn)は非常に酸化しやすく、表面にできる酸化スズ(SnO、SnO₂)ははんだの広がりを妨げます。はんだ付けを安定させるには、加熱中にこの酸化膜を化学的に除去することが必要です。
ここで重要な役割を担うのがフラックスです。フラックスの活性剤は有機酸やハロゲン化物などで構成され、酸化膜を化学的に溶解・還元します。この作用によって金属表面が清浄化され、はんだがパッドへスムーズに濡れ広がるのです。
リフローには、以下4つのゾーンがあります。
それぞれのゾーンにおけるフラックスの役割について確認していきましょう。4つのゾーンの詳しい解説は以下の記事でご確認ください。
このゾーンでは、はんだペースト中の溶剤が揮発し、フラックス成分が活性化の準備を始めます。
温度上昇が急すぎると、溶剤が急激に蒸発してスパッタ(飛び散り)やボイドの原因となるため、緩やかな加熱がポイントです。
ここで活性剤が化学的に反応し、酸化膜を除去します。
たとえば、カルボン酸(RCOOH)を含む活性剤は、金属酸化物(SnOなど)と反応して金属塩(Sn(RCOO)₂)を生成します。この反応によって酸化膜が分解され、清浄な金属表面が露出するため、濡れ性が大幅に改善されます。
この温度域ではんだが溶融し、フラックスの働きが最も重要です。
活性剤が残っている間に酸化膜が完全に除去され、はんだが金属パッド上に広がって合金層を形成します。フラックス中の樹脂成分は、表面を覆って再酸化を防ぐ保護膜として機能します。
冷却が始まると、フラックスの残渣が固化します。残渣は一般的に絶縁性ですが、過剰な残りや焦げ付きは外観不良や絶縁抵抗の低下につながります。
そのため、リフロー条件やフラックス量の最適化が重要です。
フラックスの主な化学反応は、酸化膜の還元反応です。
活性剤中の有機酸が酸化金属と反応し、金属表面を還元・洗浄します。この化学反応によって、はんだが金属パッドに密着できるようになります。
さらに、ロジンなどの樹脂成分は、加熱中に粘性のある膜を形成し、金属表面を酸素から遮断するし、酸化膜の再生成を防ぐのが特徴です。
つまりフラックスは、酸化膜を除去して、清浄化した金属を保護、溶融はんだが濡れ広がる環境を作るという役割を果たしているのです。
窒素リフローでは、炉内の酸素濃度を数百ppm以下に制御します。酸素が少ないため、はんだやパッドの酸化がほとんど進まず、フラックスが酸化除去に過剰に消費されません。その結果、活性剤の効果が長く持続し、安定した濡れ性が確保できるのです。
一方、大気リフローでは酸化が進みやすく、フラックスの反応が早く終わってしまうことがあります。この差が、窒素リフローの安定した品質につながっています。窒素雰囲気ではフラックス量を減らしても良好な接合が得られるため、残渣トラブルのリスクも低減できます。

リフロー工程においてフラックスは、酸化膜を除去し、金属を清浄化して濡れを助ける「化学反応の主役」です。温度プロファイルごとに異なる働きを持ち、はんだの広がりや接合品質を支えています。窒素雰囲気との組み合わせにより、フラックスの効果を最大限に引き出すことが可能です。
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