「遠赤外線で効率的に加熱を行いたい!」とお考えではありませんか?
遠赤外線は加熱するワークの素材によっては、非常に効率的な加熱が可能です。しかし、遠赤外線と相性が悪い素材もあり、この場合は遠赤外線加熱がかえって非効率になる場合もあります。
本記事ではセラミックス・樹脂・金属の3つの素材に注目して、遠赤外線加熱との相性についてわかりやすく解説しています。遠赤外線加熱による設備導入を検討されている方は必見です。
素材区分 | 代表素材 | 熱伝導率(W/m·K)※1 | 放射率(0~1)※2 |
金属 | 銅 | 約390 | 約0.03(鏡面)約0.6(酸化) |
アルミニウム | 約205 | 約0.05(鏡面)約0.2(酸化) | |
セラミックス | アルミナ | 約20~30 | 約0.8~0.95 |
酸化ジルコニウム | 約2~3 | 約0.85~0.95 | |
窒化ケイ素 | 約20~30 | 約0.8~0.9 | |
樹脂 | ポリエチレン(PE) | 約0.3~0.5 | 約0.9 |
ポリカーボネート(PC) | 約0.2 | 約0.9 | |
エポキシ樹脂 | 約0.2~0.4 | 約0.85~0.95 |
※1 熱伝導率:厚さ1mの材料に1K(1℃の温度差)がある時、1秒間に何ワットの熱が流れるか。値が大きいほど、熱が伝わりやすい。
※2 放射率:黒体(完全な理想放射体)に比べて、どれだけ効率よく赤外線を出すか(または吸収するか)を表す比率。値が高いほど赤外線を吸収しやすい。
金属、セラミックス、樹脂の代表例とそれぞれの熱伝導率と放射率を表にしました。
金属は熱伝導率が高いですが、鏡面仕上げでは放射率が極めて低く、赤外線をほとんど吸収せずに反射してしまいます。ただし、表面に酸化膜が形成されると放射率が高くなるのが特徴です。
セラミックスは熱伝導率が中程度で赤外線の放射率が高いため、放射冷却や断熱素材としてよく利用されます。
樹脂は熱伝導率が非常に低く、断熱性が高いのが特徴です。セラミックスと同様に放射率が非常に高いため、赤外線加熱に適しています。
素材区分 | 代表素材 | 主な赤外線吸収波長域 (μm) |
セラミックス | アルミナ | 8~12μm |
酸化ジルコニウム | 9~11μm | |
窒化ケイ素 | 9~12μm |
セラミックスとは、陶磁器やガラス、セメントなどに代表される非金属の無機物です。
上記の表はセラミックスの代表素材と赤外線吸収波長域をまとめたものであり、いずれの素材も8~12μmと「遠赤外線」の吸収波長域であることがわかります。セラミックスは放射率が0.8~0.95と高いため、遠赤外線加熱を行うことで効率的な昇温が可能です。
セラミックスを遠赤外線加熱する工程としては、内部の応力除去や表面に塗布したコーティング剤の乾燥用途があります。またセラミックス自体が遠赤外線を効率的に放射するため、遠赤外線ヒーターの素材としても広く活用されています。
素材区分 | 代表素材 | 主な赤外線吸収波長域 (μm) |
樹脂 | ポリエチレン(PE) | 約3.3~3.5、12.5~13.5μm |
ポリカーボネート(PC) | 約6.5~7.5、9.0~11.0μm | |
エポキシ樹脂 | 6~14μm |
樹脂は遠赤外線加熱と非常に相性が良い素材として有名であり、加工や乾燥工程で遠赤外線加熱が広く活躍しています。
樹脂フィルムは一般的に熱に弱く、熱ムラにより変形する恐れがあります。遠赤外線は樹脂フィルムの表面で分子振動を起こしてエネルギーを伝達するため、短時間で均一加熱が可能です。これが樹脂が遠赤外線加熱と相性が良いとされる理由です。
遠赤外線加熱の仕組みと吸収波長域については、以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
素材区分 | 代表素材 | 主な赤外線吸収波長域 (μm) |
金属 | 銅 | 広帯域で弱吸収(主に反射) |
アルミニウム | 同上 |
銅やアルミニウムなどの金属は、放射率が非常に低いのが特徴です。放射率が低いということは赤外線を反射するということであり、遠赤外線加熱では加熱しにくい素材となります。
ただし、金属の表面状態が変われば、遠赤外線加熱でも効率的に加熱できるようになります。例えば、金属に塗装やコーティングがされていれば、表面の塗料やコーティング剤が遠赤外線を効率的に吸収するため、短時間での昇温が可能です。
鏡面の金属は赤外線を反射しますが、酸化や塗装など表面状態が変われば赤外線を吸収するようになると覚えておきましょう。
遠赤外線加熱炉を選ぶ際は、まず加熱対象となるワークの素材が遠赤外線加熱と相性が良いかどうか確認することが鉄則です。
本記事で解説してきたとおり、セラミックスや樹脂は遠赤外線を効率的に吸収する素材であり、遠赤外線加熱炉を導入することで、短時間での処理ができる可能性があります。
一方で金属を加熱したい場合、表面状態によっては遠赤外線を反射してしまうため、他の熱源を利用した加熱炉の方が相性が良い場合もあるでしょう。
その他、ワーク内の高低差や形状によっては、遠赤外線加熱だけでは効率が悪く、他の熱源と組み合わせる「ハイブリッド式」の方が良い場合もあります。導入前に加熱テストを行い、事前検証を行いましょう。
遠赤外線加熱はセラミックスや樹脂とは相性が良く、効率的な加熱を実現できる一方で、金属の加熱には向いておらず、必ずしも万能な熱源ではありません。そのため、まずは事前に加熱テストを行い、検証した上で加熱設備を導入する必要があります。
遠赤外線を利用した加熱をご検討であればお気軽にTPR商事までお問い合わせください。遠赤外線ヒーターメーカーとしての長年の経験から、最適な加熱方法をご提案します。遠赤外線加熱と相性が良いか分からない素材であれば、加熱テストを実施することも可能です。
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