「加熱装置のエネルギー効率を上げて省エネしたい!」と考える人は多いでしょう。
従来の主流である熱風加熱と比較して、遠赤外線加熱は大幅な省エネにつながる可能性のある熱源です。
本記事では、各熱源のエネルギー効率に注目して、遠赤外線加熱との比較を行っています。加熱装置のエネルギー効率を高めたいご担当者は必見です。
製造業では加熱工程がエネルギー消費の大きな割合を占めています。近年は電気や燃料の価格が高騰していることに加えて、CO₂の排出削減や省エネ法への対応などが企業に求められており、加熱装置の効率化が各社の避けられない課題です。
加熱効率の低い装置では、必要以上のエネルギーが失われるため、生産コストの高騰や環境負荷の増大につながります。一方で高効率な加熱方式に変換できれば、品質を保ちながらエネルギー使用量を大幅に削減することも可能なため、遠赤外線加熱を含む高効率の加熱技術が注目されています。
加熱装置におけるエネルギー効率とは、使用した電気やガスのうち、どれだけ実際にワークを加熱できたかどうかを表す割合のことです。「ワークを加熱するのに使われた熱量÷使用したエネルギー量×100%」で計算できます。
例:遠赤外線加熱のエネルギー効率投入エネルギー:10,000kJ ワークに届いた熱量:8,000kJ エネルギー効率=8,000÷10,000×100=80% |
例えば、電気式ヒーターで部品を加熱する場合、熱が空気や金属に逃げてしまえば、その分エネルギー効率は下がります。加熱装置においてはエネルギー効率が高い方が、ワークを同じ温度にするのに必要なエネルギーが少なく済むのが特徴です。
一般的に遠赤外線加熱はエネルギー効率が高く、省エネと言われています。その理由は大きく以下の2つです。
それぞれの特徴を以下で確認していきましょう。
遠赤外線加熱は、加熱エネルギーの多くを赤外線(電磁波)として放射し、対象物がそれを吸収して直接温まる方式です。熱風加熱や接触加熱では、主に空気の対流や固体から固体への伝導で熱が伝わり、放射は加熱全体の中でごく一部しか寄与しません。
つまり、遠赤外線加熱は「加熱に占める放射の割合が大きい」方式であり、その放射エネルギーが効率的に届くことが特徴です。特に対象物の吸収しやすい波長域(約3〜20μm)と発熱体の放射波長が一致すると、熱が無駄なく吸収され、短時間で昇温が可能になります。
熱風や接触加熱では、熱を空気や金属などを介してワークを加熱する過程で多くの熱損失が発生します。一方の遠赤外線加熱は、空気などの媒体を介さずに電磁波によって熱エネルギーを直接ワークに届けるため、効率的な加熱が可能です。
物体を介さずに非接触で加熱できるのは、遠赤外線加熱の大きなメリットとなります。ワークをクリーンな状態で加熱したい工程では大いに役立つでしょう。
加熱効率を左右する3つの物理原理である放射・対流・伝導については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
加熱方式 | 熱伝達のメカニズム | エネルギー効率 | 特徴 |
遠赤外線加熱 | 放射(電磁波) | 70~90% | ワークの吸収波長域に合えば高効率。空気損失が少ない。 |
熱風加熱 | 対流 | 30~60% | 空気の加熱に多くのエネルギーが使われてロスが大きい。 |
接触加熱 | 伝導 | 50~80% | 非接触面は加熱しにくい。 |
誘導加熱 | 誘導加熱 | 60~90% | 金属の高速昇温が可能だが、ワークが限定される。 |
マイクロ波加熱 | 誘電加熱 | 50~70% | ワーク内部から加熱できるが、ムラが出やすい。 |
上記は遠赤外線加熱とその他の加熱方式でエネルギー効率を比較した表です。電磁波によってワークを直接加熱する遠赤外線加熱は、他の加熱方式と比較してもエネルギー効率が良いことがわかります。
遠赤外線加熱の中でも、即時に昇温する『QUTヒーター』はエネルギー効率が良い製品です。以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
製造業ではこれまで熱風加熱が主流でしたが、エネルギー効率を改善するために、多くの企業が加熱方式を見直しています。それぞれの加熱方式で得意・不得意があるので、最適な加熱方法を選択してエネルギー効率を高める工夫が必要です。
熱風加熱 | 遠赤外線加熱(QUTヒーター) | |
温度が安定するまでの昇温時間 | 約30分 | 約1分 |
温度安定後の消費電力 | 約60~70% | 約30% |
10kWで1時間運転した場合の消費電力量 | 5kW+3kW=8.0kWh | 0.16kW+2.95kW=3.11kWh |
※CO₂排出量(kg-CO₂/kWh) | 3.6 | 1.4 |
※CO₂排出量は約0.45kg-CO₂/kWhで算出
続いては、熱風加熱と遠赤外線加熱の使用電力を比較した表です。
熱風加熱の場合、加熱炉の温度が安定するまではワークを投入できないため、昇温が完了するまでの約30分は生産ができません。一方、遠赤外線加熱では加熱炉の雰囲気温度の影響を受けにくいため、待機時間は短くて済みます。
また昇温が完了してからの消費電力にも違いがあるため、1時間あたりで比較すると遠赤外線加熱の方が約40%も効率的です。
なお、こちらの比較で使用した遠赤外線加熱の熱源はTPR商事の『QUTヒーター』となります。以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
現代の企業は、経済活動はもちろんのこと、SDGsや脱炭素社会の移行に関する活動も行わなければなりません。このような背景があり、遠赤外線加熱はその優れた省エネ性能から、環境負荷低減につながる熱源として注目されています。
遠赤外線加熱は従来の熱風加熱と比較して、少ないエネルギーで効率的にワークを昇温可能です。そのため、消費電力量を削減して、結果的にCO₂排出量も削減できます。つまりSDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や目標13「気候変動に具体的な対策を」に直接的に貢献するものです。
TPR商事では遠赤外線加熱を中心にエネルギー効率が高い加熱装置を提案できます。気になる方は以下よりお問い合わせください。